はじめに:数字の裏にある「生活水準」のワナ
2019年に世間を騒がせた「老後2000万円問題」。 当時の資産は1,200万円ほど。「あと800万円ならなんとかなるかもしれない」と、どこか他人事のように受け止めていました。
しかし、資産が2,000万円を超えた今、気づいたことがあります。
それは、
「お金が増えるほど、生活水準を守るコストも上がっていく」
という現実です。
実際、私自身も資産が1,000万円を超えたあたりから、外食や旅行など「人生を豊かにするための支出」が少しずつ増えていきました。
私は酒もタバコもギャンブルもせず、スマホも格安SIM+楽天モバイルのデュアル運用で固定費を削っています。それでも、資産が増えるにつれ「人生を豊かにするための支出(旅行や外食)」が自然と増えていきました。一度知った「豊かさ」を老後に手放すのは、想像以上に難しいものです。
この記事では、最新の公的データと自分の家計を照らし合わせながら、
自分なりに老後資金をどう考えたか、そのプロセスをまとめています。
「世間一般」と「自分」を並べてみる
主観だけで考えると、どうしても試算が甘くなります。
まずは比較対象として、公的データから「40代世帯の平均的な姿」を整理しました。
私の金融資産と投資金額
私の資産は約2150万円で、そのうち980万円を投資に回しています。
一般世帯の金融資産も気になり調べてみたところ、金融経済教育推進機構が行った家計の金融行動に関する世論調査2025年によると40代の金融資産を保有していない世帯を含んだ場合、
金融資産 平均値1486万円(中央値500万円)
投資額(推定) 平均値486万円 (中央値は明記無し)
となっていました。
投資額については、中央値のデータは無いですが、私が思っていたよりも多いと感じました。
投資額の中央値は公表されておらず、正確な水準は確認できません。
そのため今回の試算では、金融資産に対する投資比率(約33%)を参考に、160万円として仮置きしています。
40代の平均では、資産に対する投資比率は約33%ですが、私は2年間かけて、現在の約50%から投資比率を70%まで上げたいと思っています。
老後生活費の目安
次に、老後にいくら使うかを「節約生活)」と「ゆとり生活」の2パターンで設定しました。
節約生活:月28.3万円(旅行を控え、食費もセーブ)
ゆとり生活:月37.3万円(年100万程度の旅行、ガジェット購入費を維持)
理想は、「ゆとり生活」ですが、今後、収入に変化が生じた場合や、想定のように運用がうまくいかなかった場合は、旅行や食費を抑えた「節約生活」にする見込みです
「ゆとり生活」の大まかな内訳は下記になります。
・住宅ローン 月5.3万円 (75歳まで)
・住居費(管理費・修繕積立・税金) 月3万円
・住宅専有部分修繕積立 月0.5万円
・食費、光熱費 月8万円
・通信費、雑費 月4.5万円
・ガジェット購入積立 月1.5万円
・こづかい 月2.5万円
・サブスク 月0.5万円
・保険等 月0.5万円
・臨時出費 月3万円
・旅行 月8万円 (75歳以降は減額予定)
合計 月37.3万円 (75歳以降 月26万円)
自分の位置を知るために、一般的な40代世帯も調べてみたところ、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(2025年度)によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は月額で平均23.9万円となっていました。
また、ゆとりある老後生活を送るための費用は、平均で39.1万円となっていました。
節約生活 23.9万円
ゆとり生活 39.1万円
私の設定は、この範囲の中にほぼ収まる水準でした。
私が年金額をどう置いたか
我が家は、共働き世帯です。
子供が小さい時は、妻はパートでしたが、ある程度大きくなってからは、フルで働いてくれています。
年金額については、
私 月18万円
妻 月10万円
の合計 月28万円と設定しました。
この数字は、日本年金機構の「ねんきんネット」で試算したものです。
ねんきん定期便だと、現時点での年金額しか記載されていませんが、「ねんきんネット」では、今後の予定年収を設定するだけで、将来受け取れる年金額の目安を簡単に算出でき、非常に参考になりました。
ここで、一般的なデータについても調べてみました。
年金の金額は、厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和5年度の平均受給額は下記のようになっていました。
厚生年金保険
男 166,606円
女 107,200円
国民年金保険
男 59,965円
女 55,777円
上記をもとに我が家と同じ共働き夫婦を想定してみると、
夫婦共働きの場合
・夫 : 厚生年金(会社員):約16.7万円/月
・妻 : 厚生年金(会社員):約10.7万円/月
合計では月27.4万円
このようになっていました。
我が家は月28万円なので、まさに一般的な夫婦のようです。
積立期間について
私の年齢が47歳なので、65歳までの18年間を積立期間として試算しました。
私がインフレ率をどう置いたか
日銀は物価安定の目標として、消費者物価の前年比上昇率2%(出典:日本銀行2%の「物価安定の目標」)と定め、これを出来るだけ早期に実現するという約束をしています。
そのため、今回はインフレ率を2%として考えました。
ちなみに、インフレ2%が18年間続いた場合、
将来額 = 現在額 × (1+0.02)^18
で計算するようです。
すると私の想定する生活費は、
私の場合
節約生活 28.3万円/月 ⇒ 約40.4万円/月
ゆとり生活 37.3万円/月 ⇒ 約53.3万円/月
となります。
2%以上のインフレが続くかは分かりませんが、18年という歳月で、これほどまで必要額が膨らむものかと驚きを隠せません。
ちなみに、同じ条件で計算すると、一般世帯はこんな感じになるようです。
一般世帯を想定
節約生活 23.9万円/月 ⇒ 約34.1万円/月
ゆとり生活 39.1万円/月 ⇒ 約55.8万円/月
年金の増加率をどう考えたか
インフレを考慮するなら、年金も増えてくれるのではないかと、思い調べてみると、年金も物価上昇する際には、多くはなっているようです。
厚生労働省が発表した令和8年度のマクロ経済スライドによる調整は、全国消費者物価指数に対して国民年金(基礎年金)が▲0.2%、厚生年金(報酬比例部分)が▲0.1%となっていました。
今回の試算でどうするか悩みましたが、安全を考慮して、インフレ率2%から▲0.2%とした1.8%を年金増加率とすることにしました。
インフレと同じように、増加率1.8%が18年間続いた前提で計算すると、
我が家の場合 28.0万円/月 ⇒ 約38.6万円/月
となりました。
インフレがあっても、これくらい年金も増加してくれれば、なんとか戦えると思いました。
ちなみに、一般世帯を想定した場合は、
共働き世帯 27.4万円/月 ⇒ 約37.8万円/月
となります。
運用利回りはこう置いてみた
過去の株式市場は長期的に成長してきたと言われていますが、将来のリターンは不確実です。
また、投資の世界でよく耳にする「4%ルール」についても改めて確認しました。
4%ルールについて調べてみると、ウィリアム・ベンゲンが1994年の研究で示した、老後資産の取り崩しの目安のようです。運用資産の初年度に4%を取り崩し、その後は物価上昇に応じて引出額を調整していけば、長期間資産が持続しやすいという考え方からきていることが分かりました。
以上を踏まえて、今回は運用利回りは4%で試算してみることにしました。
何歳まで見るかはこう考えた
切り崩し期間をどうするか考える上で、平均寿命を調べてみました。
生命保険文化センターによると男性が「81.09歳」、女性が「87.13歳」となっていました。
私の家系は母方が長寿ということもあり、65歳から95歳の30年間
を想定し試算することにしました。
今回の試算方法
今回は、老後に必要な金額を
「65歳から30年間、年4%で運用しながら毎月取り崩し、95歳時点で資産が0円になる」
という前提で逆算しています。
さらに、その65歳時点の必要資産額に到達するために、
「現在の資産を年4%で運用しながら、65歳まで18年間積み立てた場合に毎月いくら必要か」
を逆算しています。
つまり、
① 老後に必要な元本を求める
② その元本に届くまでの積立額を求める
という2段階で試算しています。
なお、利回り・寿命・インフレ率の前提が変われば結果も変わります。
実際に計算してみた結果
お待たせしました。それでは結果をご覧ください。
私の場合
| 比較項目 | 節約生活 | ゆとり生活 |
|---|---|---|
| 目指す生活水準 | 毎月 28.3万円 (インフレ後 毎月 約40.4万円) | 毎月 37.3万円 (インフレ後 毎月 約55.8万円) |
| 年金額 | 毎月28万円 (インフレ後 毎月38.6万円) | 毎月28万円 (インフレ後 毎月38.6万円) |
| 不足額 (インフレ2%考慮後) | 毎月 約 7.7万円 | 毎月 約 26.3万円 |
| インフレ率 | 年2% | 年2% |
| 年金増加率 | 年1.8% | 年1.8% |
| 積立期間 | 18年(=65歳-47歳) | 18年(=65歳-47歳) |
| 金融資産保有額 | 2150万円 | 2150万円 |
| 投資金額 | 980万円(2026年4月時点) | 980万円(2026年4月時点) |
| 取り崩し開始時の必要資産 | 381万円 | 3073万円 |
| 必要な積立額 | 0 円/月 積立不要(コーストFIRE) | 34,465 円/月 |
今回の試算では、「ゆとり生活」をおくるためには、取り崩し開始時(65歳)での必要資産は、3073万円、現在の資産からは+923万円あれば良いようです。18年間の積み立てを継続する場合、月々の負担は3.5万円ほどで済む計算です。
そして驚くことに、「節約生活」であれば、私は既にコーストFIREしていたようです。
コーストFIREとは、現在の資産を運用することで、追加の積立なしでも老後資金が成立する状態です。
今回の試算から見えてきたのは、同じ「老後」でも生活水準の設定と運用の有無で、必要額に3,000万円近い差が出るという現実です。
ちなみに、一般世帯を想定した場合は、以下のようになりました。
以下は公表データをもとにした簡易的な比較です。
40代の一般世帯
| 比較項目 | 節約生活 | ゆとり生活 |
|---|---|---|
| 取り崩し開始時の必要資産 | 0万円 | 3785万円 |
| 必要な積立額 | 36,659 円/月 | 109,654 円/月 |
この結果から見ると、私の生活費は平均と大きく乖離していない水準でした。
この結果から見えたこと
同じ老後でも約3,000万円近くの差が出ています。
この差は、「生活水準の違い」と「運用の有無」によって生まれていると感じました。
シミュレーターを使用し、色々なケースを試してみましたが、今回の試算では、運用を前提としない場合、ゆとり生活を維持するには負担が大きくなると感じました。
また、インデックス投資は長期的に成長が期待される一方で、短期的には大きく下落する年もあります。そのため、結果はタイミングに大きく左右される点には注意が必要だと感じました。
私は、一つの目標額だけを追うより、最低ラインと理想ラインの両方を持っておく方が安心できると感じました。
これはあくまで私なりの備え方ですが、「理想(ゆとりプラン)」と「最低ライン(節約プラン)」の二段構えで考える方が性に合っていました。
【補足】運用あり・なしでどう変わるか?
| 項目 | 節約(運用あり) | 節約(運用なし) | ゆとり(運用あり) | ゆとり(運用なし) |
|---|---|---|---|---|
| 取り崩し時の 必要資産 | 381万 | 654万 | 約3,073万 | 約5,282万 |
| 毎月積立 | 0万 | 0万 | 約3.5万 | 約20万 |
ゆとり生活をおくるには、運用ありでは、月3.5万円の積み立て、運用なしでは月に約20万円の積み立てが必要のようです。
運用するかどうかで必要積立額は約5.7倍近く変わるようです。
この結果を知り、今後インフレが続く世の中では、運用の有無で結果が変わると感じました。
そのため、私の場合は運用を継続する選択をしています。
現在、私の現金比率は50%ほどです。運用の力を最大限生かすため、約2年かけて現金比率を30%に下げ、貯蓄から投資へ徐々に移行しています。
なお、一括投資の方が効率的な場面もありますが、価格変動リスクを考慮し、分散による移行を選択しています。
私自身はNISAとiDeCoをこう考えている
じゃあ実際に何をするかですが、私はNISAとiDeCoの両方を実践しています。
私は、積み立てを続けるなら税制優遇のある制度を使う方が自分に合っていると感じています。
- 新NISA → 非課税で運用
- iDeCo → 節税+運用
この試算で考えた順番(※考え方の整理)
今回の試算では、以下の順番で前提を置いています。
- ① 老後の生活費を決める
- ② 年金額を確認する
- ③ 不足額を把握する
- ④ 運用・積立で補うかを考える
なお、運用利回りや寿命、生活費の設定によって結果は大きく変わるため、本試算はあくまで一例として整理しています。
今回の試算では
・節約生活:約400万円で成立
・ゆとり生活:約3,000万円が目安
という結果になりました
まとめ:いくら必要かより「どう生きたいか」
今回、自分の数字で試算してみて確信したのは、**「老後資金に唯一の正解はない」**ということです。
世間の「2,000万円」という数字に一喜一憂するのではなく、
- 自分にとって譲れない支出(私の場合は旅行)は何か?
- インフレというリスクに、運用の力でどう立ち向かうか? この2点を自分なりに整理できたことが、何よりの安心材料になりました。
私はこれからも、NISAやiDeCoを活用しながら、今の生活と将来の備えをバランスよく育てていく「Money Route(マネールート)」を歩んでいこうと思います。
【免責事項】 本記事の試算は、筆者個人の家計状況と仮定に基づいた一例です。投資には元本割れのリスクがあり、将来の成果を保証するものではありません。あくまで一つの試算として参考になればと思います。
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